アメリカン・ファクトリー 美国工厂
ネットフリックス・オリジナルのドキュメンタリーです。オバマ前大統領夫妻が設立した「Higher Ground Productions」の製作した第一作(共同制作ですが)でもあり、配信が始まる前から大きな注目を集めていた一作で、ずーっと観たいと思って、ほぼ4ヶ月、やっと、観ることができました。あたし、ネットフリックスどころか、テレビ持ってないんで。
Wikipediaで、簡単に背景が紹介されています(こちら)
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アメリカン・ファクトリー、公式予告
舞台は、オハイオ州デイトンにできた中国企業、フーヤオの工場。創設時、私はデイトンの少し西にある自動車部品工場で働いており、同じ会社から何人かが、この新しくできたフーヤオ工場に転職してしまいました。実際、かなりアグレッシブに人員を募集していましたし。鳴り物入りで、大きな期待を持って迎えられた、この中国資本の工場は、当初から安全性が問題視されていました。作品中では触れられていませんが、確か死亡事故も起こしています。
作中のクライマックスともなる労働組合設立問題も、ニュースでリアルタイムで見ていましたので、オチは知っていましたが、何より、中国マネジメントによるアメリカの工場の現実を捉えたドキュメンタリーと言われると、知ってる場所の話、というだけではなく、自分も同じオハイオ州にある日本の自動車製品工場で働いているので、米中の問題は、米日と同じだろうか?似た所はあるのだろうか?と、興味があったのです。
作中では、かなりあからさまに、中国マネジメント側、アメリカの労働者側の本音が聞かれます。上から目線の中国側の会議での発言も、赤裸々。日本の企業だったら、絶対ここまで踏み込ませないでしょう。米国と中国、全く文化が異なり、そして互いに自国に絶対の自信を持っている大国。互いに歩み寄ろうとしながらも、根本的にずれている、この絶対的ズレは、日米より強烈だと思う。日本の製造業も30年くらい前からアメリカに進出してきた頃は、同様の苦労があったのか?と、いうのも、この作品に興味があった理由の一つですが、どうだったのかなぁ?
この作品がうまいと思ったのは、米中経済衝突を含め、政治的な面に全く触れていないところです。配信が昨夏ですから、製作中にはまだ問題化していなかったからかもしれませんが、中国からの部品や材料に25%の関税がかかるようになり、この中国企業が受けている影響はかなりのものかと思われますが、そこは「アメリカン・ファクトリー2」を期待したいところです。
アメリカ側の話は、観ながら、これDさん~、あ、これAさんだ~、と、自分の会社に重ね合わせてしまうのも、親近感。中国から来米中のワンマン会長は、効率が上がらず、利益の出ない工場の、アメリカ人マネジメントに、かなり厳しいことを言います。その時、それを伝える通訳さんの表情がアップになりますが、同じポジションの私は、ああ、辛いよね~、自分は単に言われたままを変換するだけの役割なんだけど、自分の口から言わなきゃなんないの、辛いよね~、と、胃が痛くなった。外部の人なら、後から、あいつナニ様~(*`皿´*)ノと、一緒にボヤけるけど、自社のお偉いさんからの厳しい言葉は、伝えるの、更に辛いだろうなと思います。
一方の中国側は、予測に反して、あまり日本とは似ていないような。とはいえ、私には異質に見えた軍隊式の点呼やスローガン斉唱、社員たちが繰り出す派手な「我社サイコー!」ショーや、はてには結婚式… 程度は違えど、日本の朝のラジオ体操や半ば強制出席の忘年会も、アメリカ人から見たら同じようなものなのかしら?中国でシフト前の朝礼に感心した班長が、アメリカで同じことしたらグダグダだったのは笑ったけど、アメリカでも、普通にシフト前に集まって朝礼してると思うんだけど、GMはしなかったの?
私的には、フーヤオの誤算は、GM工場の跡地に工場を作っちゃったことかなぁ。バリバリ労組員で、時給30ドルで働いていた元GM社員たち、最初の、仕事があるだけマシな蜜月期が過ぎれば不満も募る、元より労組があって当たり前な元GMワーカーが、今の会社にも労組を、と、なるのは当然の成り行きだったんじゃないかと思う。もっとも、中国本社の「労働組合」が共産党本部兼だったのは驚きましたが。
日本からくる駐在員さんは、まずは「日本の常識、アメリカの非常識」と実感するそうです。アメリカ人マネジメントも、「アメリカの常識、日本人の予測外」で迎える。中国も、その境地に至るまでは、大変かなぁ。個人レベルでは仲良くできるのに、互いの違いをむしろ面白いと受け入れられる。現場レベルでは友情を育み、互いに携帯のグーグル翻訳で意思通知してるとことか、あー、ある、ある。あと、アメリカ人、みんな太ってるのも、ある、ある。
でも組織としては、そう簡単には行かない。オーナー会長を、現場のおじちゃんがBBQに誘う場面があったけど、実行するかどうかは別として、あそこでトップが「おお、ビール持っていくわ」くらい言えないと、歩み寄りは難しいかもしれない。現場のアメリカ人は、自分の存在が認められていると思うのは、給料や福利厚生だけじゃない、頑張ってるな、と、肩を叩かれたりするときだ、っていうシーンがありますが、ああ、それ中国人だけじゃなく、日本人にもハードル高いわぁ…
最後は、自動化導入で、要因削減の計画を話す中国人のトップ・マネジメントの姿と、2018年からFGAは黒字に転じたというテロップで終わるのですが、これは中国資本、日本資本、そして、GMやフォードでも皆、同じ方向。どこだって自動化で標準化、省人化を進めていかなきゃ生き残れないのです。なのに、今の失業率の低さの上に胡座をかいてていいのか…
「アメリカン・ファクトリー」、米人さんにも日本人にも、同僚みんなに「ネットフリックスあったら観て!」って、言ってたのですが、自分も見られた今、今度、日米同僚だけでなく、アメリカで働く日本人の皆さん、日本の会社で働くアメリカ人の感想を、広く聞いてみたい。
Wikipediaで、簡単に背景が紹介されています(こちら)
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アメリカン・ファクトリー、公式予告
舞台は、オハイオ州デイトンにできた中国企業、フーヤオの工場。創設時、私はデイトンの少し西にある自動車部品工場で働いており、同じ会社から何人かが、この新しくできたフーヤオ工場に転職してしまいました。実際、かなりアグレッシブに人員を募集していましたし。鳴り物入りで、大きな期待を持って迎えられた、この中国資本の工場は、当初から安全性が問題視されていました。作品中では触れられていませんが、確か死亡事故も起こしています。
作中のクライマックスともなる労働組合設立問題も、ニュースでリアルタイムで見ていましたので、オチは知っていましたが、何より、中国マネジメントによるアメリカの工場の現実を捉えたドキュメンタリーと言われると、知ってる場所の話、というだけではなく、自分も同じオハイオ州にある日本の自動車製品工場で働いているので、米中の問題は、米日と同じだろうか?似た所はあるのだろうか?と、興味があったのです。
作中では、かなりあからさまに、中国マネジメント側、アメリカの労働者側の本音が聞かれます。上から目線の中国側の会議での発言も、赤裸々。日本の企業だったら、絶対ここまで踏み込ませないでしょう。米国と中国、全く文化が異なり、そして互いに自国に絶対の自信を持っている大国。互いに歩み寄ろうとしながらも、根本的にずれている、この絶対的ズレは、日米より強烈だと思う。日本の製造業も30年くらい前からアメリカに進出してきた頃は、同様の苦労があったのか?と、いうのも、この作品に興味があった理由の一つですが、どうだったのかなぁ?
この作品がうまいと思ったのは、米中経済衝突を含め、政治的な面に全く触れていないところです。配信が昨夏ですから、製作中にはまだ問題化していなかったからかもしれませんが、中国からの部品や材料に25%の関税がかかるようになり、この中国企業が受けている影響はかなりのものかと思われますが、そこは「アメリカン・ファクトリー2」を期待したいところです。
アメリカ側の話は、観ながら、これDさん~、あ、これAさんだ~、と、自分の会社に重ね合わせてしまうのも、親近感。中国から来米中のワンマン会長は、効率が上がらず、利益の出ない工場の、アメリカ人マネジメントに、かなり厳しいことを言います。その時、それを伝える通訳さんの表情がアップになりますが、同じポジションの私は、ああ、辛いよね~、自分は単に言われたままを変換するだけの役割なんだけど、自分の口から言わなきゃなんないの、辛いよね~、と、胃が痛くなった。外部の人なら、後から、あいつナニ様~(*`皿´*)ノと、一緒にボヤけるけど、自社のお偉いさんからの厳しい言葉は、伝えるの、更に辛いだろうなと思います。
一方の中国側は、予測に反して、あまり日本とは似ていないような。とはいえ、私には異質に見えた軍隊式の点呼やスローガン斉唱、社員たちが繰り出す派手な「我社サイコー!」ショーや、はてには結婚式… 程度は違えど、日本の朝のラジオ体操や半ば強制出席の忘年会も、アメリカ人から見たら同じようなものなのかしら?中国でシフト前の朝礼に感心した班長が、アメリカで同じことしたらグダグダだったのは笑ったけど、アメリカでも、普通にシフト前に集まって朝礼してると思うんだけど、GMはしなかったの?
私的には、フーヤオの誤算は、GM工場の跡地に工場を作っちゃったことかなぁ。バリバリ労組員で、時給30ドルで働いていた元GM社員たち、最初の、仕事があるだけマシな蜜月期が過ぎれば不満も募る、元より労組があって当たり前な元GMワーカーが、今の会社にも労組を、と、なるのは当然の成り行きだったんじゃないかと思う。もっとも、中国本社の「労働組合」が共産党本部兼だったのは驚きましたが。
日本からくる駐在員さんは、まずは「日本の常識、アメリカの非常識」と実感するそうです。アメリカ人マネジメントも、「アメリカの常識、日本人の予測外」で迎える。中国も、その境地に至るまでは、大変かなぁ。個人レベルでは仲良くできるのに、互いの違いをむしろ面白いと受け入れられる。現場レベルでは友情を育み、互いに携帯のグーグル翻訳で意思通知してるとことか、あー、ある、ある。あと、アメリカ人、みんな太ってるのも、ある、ある。
でも組織としては、そう簡単には行かない。オーナー会長を、現場のおじちゃんがBBQに誘う場面があったけど、実行するかどうかは別として、あそこでトップが「おお、ビール持っていくわ」くらい言えないと、歩み寄りは難しいかもしれない。現場のアメリカ人は、自分の存在が認められていると思うのは、給料や福利厚生だけじゃない、頑張ってるな、と、肩を叩かれたりするときだ、っていうシーンがありますが、ああ、それ中国人だけじゃなく、日本人にもハードル高いわぁ…
最後は、自動化導入で、要因削減の計画を話す中国人のトップ・マネジメントの姿と、2018年からFGAは黒字に転じたというテロップで終わるのですが、これは中国資本、日本資本、そして、GMやフォードでも皆、同じ方向。どこだって自動化で標準化、省人化を進めていかなきゃ生き残れないのです。なのに、今の失業率の低さの上に胡座をかいてていいのか…
「アメリカン・ファクトリー」、米人さんにも日本人にも、同僚みんなに「ネットフリックスあったら観て!」って、言ってたのですが、自分も見られた今、今度、日米同僚だけでなく、アメリカで働く日本人の皆さん、日本の会社で働くアメリカ人の感想を、広く聞いてみたい。
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Author:sirowaniko
アメリカ生活も30年超え、NY、MA、DC、TX,CO、CAを経て、今はオハイオに犬猫と住んでいる普通のおばさん。蚊と蚤とトランプ一味以外の生き物が好き。
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