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アメリカのデス・スパイラル

 中間選挙(11月8日投票)が近づいてきました。上下院議席の約3分の1が改選されるので、結果次第では共和党が多数派を奪還する可能性がありますl。現在は、下院(定数435、任期2年)が民主党220議席、共和党212(欠員3)議席、上院(定数100、任期6年)は無所属を含む民主系と共和党が50議席ずつ。上院議長を兼ねるハリス副大統領が決裁票を有するので、民主党内で全員が足並みを揃える必要があり、この2年間、バイデン政権は党内部の統制に苦労してきました。

 中間選挙は、現政権への国民の審判の意味合いが強く、現状には不満が募るのが人間の性なので、通常は野党が有利です。しかも今回は、歴史的なインフレの渦中ともあって共和党有利が予想されていましたが、人工妊娠中絶の是非が大きな争点となっています。

 今年の6月24日、連邦最高裁が、中絶は合衆国憲法条の権利であると認めた1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆して以来、共和党州は中絶禁止・規制を発効してきました。私の住むオハイオ州も最高裁判決の数時間後には、受胎後約6週間、心拍音が確認されてからの中絶は理由の如何に関わらず違法と決められました。その直後、レイプで妊娠してしまった10歳(!)が中絶措置を受けるために、隣のインディアナ州まで行かねばならなかったという実例も発生しています。

 これらの中絶を禁止している州は同時に、低所得の妊娠している女性や、その新生児への健康保険や経済的支援等への保護体制が整っておらず、健康状態も悪くなりがちだという統計結果が明らかになっています。ソースは、毎度お馴染み、暫く前にラジオで聴いた話

 結果、そのような州に住む低所得の人々が煽りを食う。バイデン政権が静かに通したグッドジョブな法の1つが、コロナ救済法内のメディケイド受給対象を、誕生時から12ヶ月間に延長できるオプションを州に提供したこと。現在、33州とワシントンD.C.が、これを実施中ですが、残り17州の殆どは中絶も禁止という、実に判り易いことになってる。日本でも子供の貧困が問題視されていますが、2020年に実施された国勢調査の結果によれば、これら中絶禁止州は子どもの貧困率の高い州でもある。一番酷いのが南部のミシシッピ州で、実に27.9%(Center for American Progress)。子供の4人に一人以上が貧しい。

 産まれる前は母体を犠牲にしてでも、プロライフだ、何だかんだと保護するのに、産まれた途端にポイ。いち早く中絶禁止を実施したテキサス州の小学校で起きた19人の小学生と二人の先生が銃乱射で犠牲になった事件、その以前の数多くの校内での無差別射撃事件、毎日のように全米で起きている、小規模な事件…今、生きている子供たちを守ることが最優先ではないのでしょうか?

 胎児は保護、でも母体の健康は無視の結果、不幸にも産まれた子供達の健康状態も良くない。厳しい経済状況と、不十分な医療や環境等による危険要因に晒された結果の早産、死産、低体重児の数の関連性は、貧困層の直面する妊娠・出産への危機を明らかにしています。これは、特に黒人に顕著で、低体重児の割合は、白人の14人に一人に対し黒人では7人に一人。人種に加え、広いアメリカ、都会の貧困地区だけではなく、田舎じゃお医者にかかるのも一苦労です。お医者さんだって保守的など田舎で、安い給料でお医者したくない。日本も同じ状況ですが、病院・診療所にさえ辿り着けば医療サービスは受けられます。国民保険のないアメリカでは、そのオプションすらありません。

 その原因の一つは、保守州は通称オバマ・ケアこと医療保険制度改革法が大嫌いで、メディケイドのような、政府の医療扶助制度も大嫌いだから。収入が、連邦の貧困レベル設定金額の138%以下の成人は、ほぼ全員が、医療扶助保険のメディケイドに加入できますが、この制度は連邦と州の共同事業なので、参加する・しないは州の判断次第。

 そこに加えて、医療サービスの欠けたエリアが、またしても主に中絶禁止州に多いという事実。前述のラジオ報道でも、これらの州に住む人々が保護や援助を受けるのはいかに困難か、州がその資金を出し渋っているかを数字を基に紹介していました。

 でも、州だけを責めるわけには行きません。州民の選んだ州政府は、州民の意見を代表しているハズなので。保守的な「キリストさんが中絶はダメって言ってるからダメ」、な皆さんと、「政府が無理やり健康保険に入れとか超ウザい!」って皆さんは被る。結果、中絶禁止、保険は自己責任で、大阪弁で言うところのドつぼ状態。選挙権を持つ州民の皆さん、本当にそれでいいの? 


 またトランプの息の掛かった共和党候補の躍進が、逆に民主党を有利に導くという予測もあります。共和党が一院でも多数派を奪えば、バイデン政権が法案を通すのがさらに難しくなる。ここまで、医療保健や薬代を抑制し、富裕層への増税、NATOでのリーダーシップ、そして未だアメリカ兵を1人も出さずにプーチンと戦っている。大学の学資ローン偏在免除も通した。良い仕事をしてきていると思います。ですが、バイデン政権の進めている大型経済対策や気候変動対策も、投票機会拡充、銃規制強化といった法案も、共和党が多数奪還後は、もう可決不可能になるでしょう。一方的に保守派の価値を押し付け続ける今の連邦最高裁、そして共和党に対して国民がどんな判定を下すのか… 未だ予断を許しません。アメリカ市民じゃないから投票はしないくせにエラソーに言える立場ではないけれど、住んでるんで全体的に安心できる方向に進んでほしい。

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国立地下鉄道自由センター、‘Free as they want to be’より



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Comment
今が、本当の正念場。
私は、11月に投票して来ます。
民主党が、なんとか頑張ってくれるといいのですが。ギリギリって感じですね。
キャットラヴァー様
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sirowaniko

Author:sirowaniko
アメリカ生活も30年超え、NY、MA、DC、TX,CO、CA、OHを経て、今は南部のジョージアに犬猫と住んでいる普通のおばさん。蚊と蚤とトランプ一味以外の生き物が好き。

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