人間たちの話
面白い本に出会いました!柞刈湯葉さんの短編集、「人間たちの話」。この方の作品を読むのは初めて、というより、初めて知った作家さんなのですが、電子書籍サイトがセールだったので、なにか面白くてサクッと読めるものないかなぁと探している時に見つけました。私の感想を一言でいうと、すごく理系
私は文系頭なので、発想も視点もとても新鮮でした。ご自身によるあとがきで、これはSF(サイエンス・フィクション)」ですとあり、多くのSFは本当は「サイエンス」じゃなくて「テクノロジー・フィクション」だよね、と、書かれていましたが、これも「なるほど!」です。
読み易い軽妙な文体で、様々なシチュエーションの6篇が収められています。特に3作目の「人間たちの話」と、最後の「NoReaction」は、これぞ当に「サイエンス」フィクション。こういう考え方、見方もあるのかと嬉しい驚きでした。作者の柞刈さんは、商品内容の紹介で「稀才」と評されています。「奇才」としている紹介もありましたが、アマゾンでは「稀才」。こっちだよね。

表紙絵が、各短編の登場キャラたち
この絵の感じもぴったり(゚∀゚)
「冬の時代」
寒冷化が進んで雪と氷しか無い日本列島を、かつて岩手だったところから歩いてきた二人組は、南にあるという「春の国」を目指して橇を引いて歩いて1年ほど。かつて静岡だった所で珍しく動いている機会と遭遇し... これは長編にしてほしい。もっと二人の旅路を追っていきたいです。出てくる色んなガジェットや、冬の時代の来る前に遺伝子操作された生物も面白い。
「楽しい超監視社会」
作者自身のあとがきによると、オーウェル「一九八四年」の、超ふざけたパロディーだそうです。常に監視された世界に馴染み、楽しく生きてる青年達のお話。互いに監視し合う目的で2人1組が要求される社会で、1人は作家志望の大学生、もう一人は屈強な兵士。とかく若者達は楽しく生きることが得意。反体制者をチクったり、彼女を作ることでポイント稼いでハイファイブ!こういう世界しか知らず、それが普通として育てば、わざわざ思想を持って体制に反抗しようとは思わない。宗教二世的な?現代社会への警告として一説打つ人もいそうだけど、私は単純にアハハと笑って面白かった。
「人間たちの話」
火星の新生命を発見したチームの科学者、生命とは何だろうと疑問を抱き、まずは姉の子で、いきなり押し付けられた甥と人間的関係を築こうと思う話、って書くと随分とウェットな感じだけどむしろドライでシニカル、短い中にサラリと複雑な設定を織り交ぜながら、最後にはほっこり。これだけのお話を短くまとめるところも、難しい科学論を判りやすく読ませるところも巧い!
「宇宙ラーメン重油味」
『消化管があるやつは全員客』をモットーに、内惑星でラーメン屋を営む青年。太陽系外生命体のお客さまに満足してもらうため、お客様の様々な生態や好みを研究し、多様な材料を取り寄せてラーメン作りに挑みます。スープによくある軽油じゃなくて重油が使われているのも、お客様が喜ぶポイント。怒涛の化学の蘊蓄、てんでわかんない。でも作者の知識量と科学への理解をバックボーンに難しいことを軽く、面白おかしく書いて、文系な私も楽しく読める。それにしても、この頃、妙に客が増えたなぁと思ったら、実は...ってオチも良し。
「記念日」
30歳の誕生日、アパートの部屋にいきなりマルグリッドの絵に出てくるような巨大な岩が現れた研究員。モデルは作者ご自身かしら?一歩間違えば(?)、人間の心の深層に踏み込んだ、カフカっぽい不条理小説になりそうなのに、これも軽く読ませるユーモアセンス。でも、この雰囲気を保ちつつ、他の言語に翻訳するのって難しそうって思った。
「No Reaction」
主人公は透明人間の中学生。中学生の年齢なら羨望の存在だけど、現実には他からは見えないから存在しないのと同じで、物質的に干渉できないから自分ではドアも開けられなくて不便だし、人に触れても感じてもらえない。好きな人ができても、彼女は自分の存在を感じない。切ない。ジャンプ+の読切漫画にありそうなお話。
と、書いてきて気がついたのは、どの作品も人と何か(他の人だったり、宇宙生命体だったり、岩だったり)の交流が暖かく描かれていること。どのお話も読後感はスッキリ、ほっこり。
これが気に入ったので、早速、同じ作者の「未来職安」も買ってみました。ユニバーサル・ベーシックインカムが実現し、99%の人口は消費者として何もせず、1%だけが生産者として働いている世界という設定は面白いけど、「人間たち」ほどの新鮮味は感じませんでした。デビュー作を収めた「まず牛を球とします。」も読みたいけど、まだ単行本で高いので文庫になるのを待ちます。
私は文系頭なので、発想も視点もとても新鮮でした。ご自身によるあとがきで、これはSF(サイエンス・フィクション)」ですとあり、多くのSFは本当は「サイエンス」じゃなくて「テクノロジー・フィクション」だよね、と、書かれていましたが、これも「なるほど!」です。
読み易い軽妙な文体で、様々なシチュエーションの6篇が収められています。特に3作目の「人間たちの話」と、最後の「NoReaction」は、これぞ当に「サイエンス」フィクション。こういう考え方、見方もあるのかと嬉しい驚きでした。作者の柞刈さんは、商品内容の紹介で「稀才」と評されています。「奇才」としている紹介もありましたが、アマゾンでは「稀才」。こっちだよね。

表紙絵が、各短編の登場キャラたち
この絵の感じもぴったり(゚∀゚)
「冬の時代」
寒冷化が進んで雪と氷しか無い日本列島を、かつて岩手だったところから歩いてきた二人組は、南にあるという「春の国」を目指して橇を引いて歩いて1年ほど。かつて静岡だった所で珍しく動いている機会と遭遇し... これは長編にしてほしい。もっと二人の旅路を追っていきたいです。出てくる色んなガジェットや、冬の時代の来る前に遺伝子操作された生物も面白い。
「楽しい超監視社会」
作者自身のあとがきによると、オーウェル「一九八四年」の、超ふざけたパロディーだそうです。常に監視された世界に馴染み、楽しく生きてる青年達のお話。互いに監視し合う目的で2人1組が要求される社会で、1人は作家志望の大学生、もう一人は屈強な兵士。とかく若者達は楽しく生きることが得意。反体制者をチクったり、彼女を作ることでポイント稼いでハイファイブ!こういう世界しか知らず、それが普通として育てば、わざわざ思想を持って体制に反抗しようとは思わない。宗教二世的な?現代社会への警告として一説打つ人もいそうだけど、私は単純にアハハと笑って面白かった。
「人間たちの話」
火星の新生命を発見したチームの科学者、生命とは何だろうと疑問を抱き、まずは姉の子で、いきなり押し付けられた甥と人間的関係を築こうと思う話、って書くと随分とウェットな感じだけどむしろドライでシニカル、短い中にサラリと複雑な設定を織り交ぜながら、最後にはほっこり。これだけのお話を短くまとめるところも、難しい科学論を判りやすく読ませるところも巧い!
「宇宙ラーメン重油味」
『消化管があるやつは全員客』をモットーに、内惑星でラーメン屋を営む青年。太陽系外生命体のお客さまに満足してもらうため、お客様の様々な生態や好みを研究し、多様な材料を取り寄せてラーメン作りに挑みます。スープによくある軽油じゃなくて重油が使われているのも、お客様が喜ぶポイント。怒涛の化学の蘊蓄、てんでわかんない。でも作者の知識量と科学への理解をバックボーンに難しいことを軽く、面白おかしく書いて、文系な私も楽しく読める。それにしても、この頃、妙に客が増えたなぁと思ったら、実は...ってオチも良し。
「記念日」
30歳の誕生日、アパートの部屋にいきなりマルグリッドの絵に出てくるような巨大な岩が現れた研究員。モデルは作者ご自身かしら?一歩間違えば(?)、人間の心の深層に踏み込んだ、カフカっぽい不条理小説になりそうなのに、これも軽く読ませるユーモアセンス。でも、この雰囲気を保ちつつ、他の言語に翻訳するのって難しそうって思った。
「No Reaction」
主人公は透明人間の中学生。中学生の年齢なら羨望の存在だけど、現実には他からは見えないから存在しないのと同じで、物質的に干渉できないから自分ではドアも開けられなくて不便だし、人に触れても感じてもらえない。好きな人ができても、彼女は自分の存在を感じない。切ない。ジャンプ+の読切漫画にありそうなお話。
と、書いてきて気がついたのは、どの作品も人と何か(他の人だったり、宇宙生命体だったり、岩だったり)の交流が暖かく描かれていること。どのお話も読後感はスッキリ、ほっこり。
これが気に入ったので、早速、同じ作者の「未来職安」も買ってみました。ユニバーサル・ベーシックインカムが実現し、99%の人口は消費者として何もせず、1%だけが生産者として働いている世界という設定は面白いけど、「人間たち」ほどの新鮮味は感じませんでした。デビュー作を収めた「まず牛を球とします。」も読みたいけど、まだ単行本で高いので文庫になるのを待ちます。
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私は、金太郎あめのように、
どこを切っても、感覚脳で、理系とは対極だけれど、
それだけに、面白そう~
図書館のHPで調べたら取り扱いがあったので、早速、予約してみました^^v
本って、自分の好みで選ぶけれど、
こうして、紹介されてる本で新たな出会いがあるから、楽しみです^^v
どこを切っても、感覚脳で、理系とは対極だけれど、
それだけに、面白そう~
図書館のHPで調べたら取り扱いがあったので、早速、予約してみました^^v
本って、自分の好みで選ぶけれど、
こうして、紹介されてる本で新たな出会いがあるから、楽しみです^^v
そんなあほな。様
いままで、理系脳とか理系の人とか言われても、なかなかぴんと来なかったのですが、この本を読んだら、なるほど、これが理系脳というものか!と、思いました。私もどこまでも文系脳で、作者さんの発想自体がもう根本的に考え方とか見方が違うんだろうなって感心。
ラーメンの材料の部分なんて、知識のある人からしたらすごく面白いのでしょうが、私は分かんないので適当に読み飛ばし、単純にお話を楽しみました~w
普段は本の感想や紹介文って苦手なのですが、あんまり感心したので書きたくなりましたv短編だし、読みやすい文章なので、サクッと読めちゃいます。
ラーメンの材料の部分なんて、知識のある人からしたらすごく面白いのでしょうが、私は分かんないので適当に読み飛ばし、単純にお話を楽しみました~w
普段は本の感想や紹介文って苦手なのですが、あんまり感心したので書きたくなりましたv短編だし、読みやすい文章なので、サクッと読めちゃいます。
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アメリカ生活も30年超え、NY、MA、DC、TX,CO、CAを経て、今はオハイオに犬猫と住んでいる普通のおばさん。蚊と蚤とトランプ一味以外の生き物が好き。
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